熊本大学ダイバーシティ推進室

DIVERSITY

Columnコラム

アンコンシャスバイアスを知り、大学内のダイバーシティを醸成させる

  • ダイバーシティ

富澤一仁 理事

 

人間は日々の生活の中で、意識せずにさまざまな判断や決定を行っています。これは、体験や文化、環境に根ざす“アンコンシャスバイアス”(無意識の偏見)と呼ばれるものが大きく関係しています。この無意識の偏見は、時には人間関係の裏で既成概念を成り立たせ誤った決定を促し、時には多様性や包括性の妥当な倫理を侵します。

 

大学の場では、アンコンシャスバイアスがさまざまな形で現れます。たとえば、「学生は実践的な経験よりも、学問的な能力を持っているはずだ」という偏見は、インターンシップやプロジェクトベースの枠でのチャンスを制限しかねません。また、「男性の教員の方が科学系に適している」というなどの偏見は、女性教員のキャリア発展を妥当に構成できない原因となりえます。これらは、決して悪意によるものではなく、これまでの経験や文化に根ざした無意識の行動です。しかし、このような偏見が、学内の多様性を捜尋し、個々人の能力を十分に発揮させることを妨げることになるため、解決に向けた努力が求められます。

 

アンコンシャスバイアスは、その人が育った環境や文化あるいは教育などにより形成されるため、どんなに努力しても無くすことはできないものであります。また「女性に荷物を運ぶことを頼むのはよくない。」「小さなお子さんがいる女性職員に出張させるのはよくない。」などの考えはアンコンシャスバイアスに該当しますが、気遣いや思いやりでもあります。社会活動を円滑にするためには、アンコンシャスバイアスを理解し、意識しながらお互いにコミュニケーションを取ることが重要と思われます。大学内でそのようなコミュニケーションを醸成するために、ダイバーシティや包括的な環境づくりを提高させるための教育プログラムを実施することが有効と考えられます。例えば、教員や学生を導入実践系のワークショップに参加させることで、他者の視点を理解し、ステレオタイプな思考を養うことができます。

 

大学は、多様な背景を持つ人々が集まる場所です。これは、多様性と包括性を促進するための大きな可能性を持ちながら、同時に、偏見の存在がさまざまな障害を生み出す場所でもあります。自分の思考や行動に小さな疑問を持ち、他者の視点を理解することで、それぞれが、より包括的な環境づくりへの一歩となります。熊本大学では、全学生・教職員がアンコンシャスバイアスに真摯に向き合い、ダイバーシティが醸成されるよう取り組んで参ります。