第3回 女性研究者交流会
女性研究者の研究がライフイベントにより中断や遅滞を招くことなくスムーズに遂行されるよう支援し、研究力やリーダーシップを向上させることを目的に実施している女性研究者研究活動支援事業(拠点型)の一環として第3回「女性研究者交流会」を7月17日、熊本大学薬学部大江キャンパス内「宮本記念館」で開催しました。
講師に熊本大学発生医学研究所准教授で「再発乳がん」の仕組みを解明する等、細胞医学分野で活躍中の斉藤典子先生を迎え、講演の後、直接意見交換することで自身のキャリアを 築く一助にしていただきたいと企画したもので、研究者、女子学生や院生・ポスドクなど、定員を超えて23人の参加がありました。
今回は「普通女子、アメリカ大学院で博士をとる」のテーマで、斉藤氏がアメリカの大学院や研究生活を経て、現在のキャリアに至るまでを、興味深いエピソードを交えて話をされました。特に、アメリカと日本の大学院生の育成の仕方の違いや、男女の役割についての考え方の違いなどを、経験を通して知ったことを述べられました。また、研究生活の岐路において、アメリカでも日本でも、大事な出会いがあり、周囲の支えがあったことについて話されました。
講演後、質疑応答があり「大学院への進学を考えているが、いつ結婚して、いつ頃子どもを産めばよいか」、「留学に際して親の反対はなかったか」という質問に対しては「あまり先のことばかり考え過ぎないで、まずは自分が何をやりたいかが重要だ」とのアドバイスがあるなど、参加した学生や若手の研究者が熱心に質問し、斉藤先生や他の研究者の先輩が答える場面もありました。
参加後のアンケートには 「アメリカでの学生生活をこれほど詳細に聞くことができ、大変貴重な経験になった」、「Ph.Dをとられた様々な人の意見が聞けて良かった」、「このような機会を通して若いうちからキャリアを考えられるというのは素晴らしいことだと思う」、「若い人だけでなく、ボス世代の意識改革、男性の指導者に対する教育にも力を入れてほしい」等の意見が寄せられました。
(講演の概要)
大学を卒業した頃の日本は、まだ女性の社会進出が自然に受け入れられる状況ではありませんでした。そんなとき、夫がアメリカへの留学を決めたので、一緒に渡米し、ジョンズホプキンス大学の大学院で博士号を取得しようと考えました。
ジョンズホプキンス大学の大学院では、多くの課題や厳しい試験があり大変でした。しかし、教授が大学院生を育成するにあたり、研究の内容や考え方を重視するため、日本では受理されないような外観のレポート用紙を受理し、内容が良ければ高得点を与えるというアメリカならではの姿勢に衝撃を受けました。
アメリカでは、自分の研究室を持つ女性研究者はたくさんいます。また、女性の大学院生・ポスドクの人が、結婚したり妊娠・出産することは、当然のように受け入れられています。ライフイベントを、女性だけのものではなくパートナーと共に受け入れ、周囲の環境もそのことを自然なこととしているためだと思います。
帰国後も、所属した研究室の教授のほかさまざまな人たちの支えがあり、また、「熊本大学男女共同参画推進基本計画」の支援事業などで後押しされるかたちで、今まで研究者として続けることができました。今年の春からは、熊本大学の男女共同参画コーディネーターとなりましたが、まだ施策と現実にギャップがあると感じています。男女にかかわらず、各々が力を発揮できる職場へと変わるような施策が必要です。
若い学生および若い研究者の方へのメッセージとして、啐啄同時(そったくどうじ)という言葉を紹介します。これは、禅の言葉で悟りを開こうとしている弟子に、師匠がうまく教示を与えて悟りの境地に導くことを表現しています。「啐啄」とは、卵の殻を雛と親鳥が、内側と外側からつつく音です。それが「同時」であったとき、卵の殻が破れるということです。自分の場合も、アメリカで大学院に入りたいという私の声に対して、教授が「You are going to be a scientist.」と言ってくれたのが、その瞬間でした。「何がしたいか」を明確にし、発信することは重要なことです。
講師 熊本大学 発生医学研究所 准教授 斉藤 典子(さいとう のりこ) 氏 1987 東北大学農学部卒業 1989 東北大学大学院農学研究科 修士課程修了 1996 アメリカ メリーランド州 ジョンズホプキンス大学医学部大学院 博士課程修了(Ph. D.) 1996-1999 アメリカ メリーランド州 NIDDK/NIH 研究員 1999-2001 アメリカ ニューヨーク州コールドスプリングハーバー研究所研究員 2002-現在 熊本大学発生医学研究所 研究員、助教を経て、准教授 現在、日本細胞生物学会 男女共同参画・若手研究者育成委員 日本細胞生物学会・評議委員、熊本大学男女共同参画コーディネーター |
( 第 3 回 女 性 研 究 者 交 流 会 の 過 去 の 記 事 )
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
詳細は、下図をクリックすると、ご覧いただけます。(PDF:236KB)
女性研究者研究活動支援事業(拠点型)
「女性研究者交流会」のご案内
熊本県内の女性研究者の研究がライフイベントにより中断や遅滞を招くことなくスムーズに遂行されるよう支援し、研究力を向上させることを目的に実施している女性研究者研究活動支援事業(拠点型)の一環として、下記のとおり「女性研究者交流会」を開催します。
講師の斉藤典子氏は、米メリーランド州ジョンズホプキンス大学医学部大学院で博士号を取得され、現在は、熊本大学発生医学研究所准教授として「再発乳がん」の仕組みを解明するなど国内外で活躍中です。斉藤先生の経験談に触れ、直接意見交換することで、自身のキャリアを築く一助にしていただきたいと、今回の交流会を企画しました。学生や大学院生にもお声掛けいただき、ふるってご参加ください。
|
▶ 実施日時: 平成27年 7月 17日(金) 午後2時 ~ 3時30分 ▶ 場 所: 熊本大学薬学部「宮本記念館」コンベンションホール (熊本市中央区大江本町5-1) *アクセスは、下記 「大江キャンパス」マップ参照 http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/museum/guide/access/index.html ▶ 講 師: 熊本大学発生医学研究所准教授 斉藤典子氏 (略歴 別紙参照) ▶ プログラム ・主催者挨拶 ・講師プロフィール紹介 ・参加者の自己紹介 ・演題 「普通女子、アメリカ大学院で博士をとる」 ・質疑応答 ・意見交換
▶ 対 象: 大学コンソーシアム熊本加盟の高等教育機関所属の研究者、 学生、大学院生 ▶ 参 加 費: 無料 ▶ 募集人員: 20人 |
(終了しました)
主催: 熊本大学 男女共同参画推進室
女性研究者研究活動支援事業(拠点型)事務室
共催: 熊本大学大学院生命科学研究部(薬学系) 男女共同参画推進委員会


















